キドコロネ

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沈黙博物館

 

沈黙博物館

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 感想

 死、沈黙、遺物と小川さんがよく題材にしてきたモチーフを主題に添えた長編小説。独特の静けさをもった世界観と文体は変わらないが、他作品よりもストーリーに動きが多く、一人称で語られる主人公「技師」の感情にも緩急が見られる。作中ずっとつきまとう死の喪失感が、ラストに連れて存在を増幅させ、圧を生み出す描き方はサスペンス的であり、不快感さえ感じさせる。小川洋子作品に新たな一面を見られた。

 「僕」という一人称で語られていたのもあるのだろうが、どこか村上春樹を彷彿とさせる作品だった。静けさのなかで、猟奇的な殺人が起きたり、性的な部位の描写が多かったため、そう感じたのだと思われる。