キドコロネ

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キツツキと雨

 

キツツキと雨 通常版 [DVD]

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あらすじ

 妻の死後、仕事も家事を一手に引き受けマメに取り組む堅気な親父・克彦は、一人息子でプーの穀潰し・浩一にやきもきしていた。昼まで寝ぼけている息子に「こん役立たずがあ!」とケンカする毎日だ。そんなある日、二人の暮らす田舎に映画の撮影陣がやってきた。ガス欠で困っていた彼らを助けたのをきっかけに、克彦はうだつの上がらない若者・幸一に出会う。映画関係者の幸一と知り合った夜、息子の浩一が家を飛び出してしまった。息子と入れ替わりに、幸一が克彦の家を訪ねる……

 役所広司がコウコウとして、小栗旬がシュンシュンする映画。 

おきにいりのシーン

☆克彦と息子のケンカ。

☆克彦「10人ジャブジャブ」 

☆克彦と幸一が車内で映画について話す。

☆幸一、監督イスをもらう。

☆克彦と幸一のシーンはぜんぶ好き。

広大な田舎をバックにちょこんと体育座りするふたりはとってもかわいいです。 

感想など ネタバレあり

 あらすじにも書いた通り、この作品にはふたりのコウイチが登場し、入れ替わりで克彦のまえに現れる。穀潰しの浩一には「早く一人前になれ」と吠えていた克彦だが、映画監督の仕事で思い悩む幸一と接しているうちに、息子へ出来る一番の助力を見出す。息子の浩一はほとんど登場しないが、浩一と幸一は表裏一体として描かれている。少なくとも、克彦の中ではそうなっているだろうと思う。

 克彦は巻き込まれる形で映画撮影に協力するはめになったが、彼自身はそう大きな助力をした気はしていないはずだ。幸一が困っていたから、自分の出来ることをやっただけ。それだけだ。

 この映画の特徴に等価交換の不成立があげられる。「ほぼ一方的に恩恵を受けられる関係性」を築けるものは、親子関係以外思い当たらない。克彦と幸一は作品中で親子に似た関係を作り上げる。克彦が目に見えて得た物はないが、コウイチというふたりの息子に出会えたことこそ、彼が受けた恩恵になるのだろう。

 本当の親子では築けない関係もある。幸一に見せた克彦の優しさは、浩一には向けられないものに違いない。親子は無愛想になってしまいがちだと思う。

 監督が「南極料理人」で一躍有名になられた沖田さんであることもあり、食事のシーンがいいと評判だ。私も気に入っている。bgmなしに黙々と食べ、ときおり喋る様子を三人称の視点固定で映す。私はこの撮り方が好きで、作中の彼らがより身近に感じられる。テレビの枠が窓枠に成り代わり、遠くない距離で彼らが動いているのをふと眺めているような気分になる。 視点固定はこの作品で多用されている。

 食事シーンで気に入っているのは克彦と幸一の最後の夕食だ。向かい合って、幸一が映画監督の道を歩み始めた発端を語ったり、ふたりであん蜜を食べる。「甘いもの」は作中で重要アイテムだ。幸一の口にあん蜜をねじ込むという克彦の強行にはヒヤヒヤさせられた。

 このシーンで幸一が山形出身だと知り、同郷の私はテンションが上がったのだが、なぜ「地方から上京してきた若者」の設定には山形出身者が多いのだろう? この間観た「小さいおうち」や、「芙蓉千里」という小説も、田舎っぺは山形県人だ。